(映画パンフレット)『愛の亡霊』

 中村糸子による原作小説「車屋儀三郎事件」を映画化、「愛のコリーダ」と同じフランスのA・ドーマン製作、若松孝二製作協力、大島渚脚本、監督作品『愛の亡霊』(1978)

  仏題「L’Empire de la passion」

 (出演)藤竜也、吉行和子、田村高廣、川谷拓三、小山明子、河原崎健三、長谷川真砂美、佐藤慶、殿山泰司、伊佐山ひろ子、

 (音楽)武満徹

・・何十年かぶりに鑑賞。十代の頃だったかテレビで観た記憶があったような・・ただ(勿論)ピンとこなかったかもしれないし『楢山』同様退屈したかもしれない。今度は日本の土着的、閉鎖的社会を描かれた『楢山節考』『神々の深き欲望』などと共に鑑賞。

・・いやぁ、主演の吉行和子さんがいい。やっぱりなにが良いって体を張った演技もたしかにそうだけど、そのキャスティングとして普段の主演級の美的な女優さんというよりもバイプレイヤー的な女優さんとしてしかも庶民的市井人役としてもうってつけなハマりぐあいもある女性像としてのエロス度がまた格別に観てて上がったもんだった。そういったくずれ、はだけ、露骨でないエロスを他の作品でも感じたぐあいとして(この映画を観ながら)『鬼婆』での乙羽さん吉村さん『砂の女』での岸田さんなど演じられた女と重なったりして、はだけた上着やむやみに見せない裸体などのエロチックにフェロモンムンムンと云うか色香と云うのか、いや、それらをも超えたオスメスとしての本能からくる性的刺激がたしかにあった。

・・あと、たしか冒頭からの武満スコアを聴いて思い出したけど、このポロンポロンと妖艶に奏でれるハープだろうかのスコア・・これ、以前もぅ何年も前にユーロスペースでだったかの特集上映のなかの作品『愛奴』を観に行った時の幕間での館内に流れてた曲がこれで、自分はてっきり『愛奴』のメインテーマだかスコアと思い込んでスタッフに「CDなどあるもんですか?」など聞いたもんだった。そうしたら今流れてるのは『愛奴』ではなくて『愛の亡霊』ですと教えてくれたことががあったもんだった。