(書籍)(小説・エッセイ)『方舟』

  「週刊文春ミステリーベスト10」&「MRC大賞2022」堂々ダブル受賞作品、夕木 春央著『方舟』(2022)講談社

・・ここんとこ最近ミステリーを読んでなかったこともあったりしたなか、テレビやネットで嫌でも目にしてたこの小説の絶賛ぶり。絶賛の嵐。映画と同様、そんなに凄いのか、面白いのか、どんだけの仕掛けや技があるのだろうかと購入して(大いに期待をこめて)じっくりと時間かけて読んだ。

 誰にも忖度かけることもなく気も遣う人もいないので正直に思ったことを吐露する。

・・ん~ん、正直、自分的には刺さらなかったなぁ~。それならとあまりにも大いに期待したこともあったせいか、予想した展開や仕掛けやラストでの驚きなども、過去に読んで何度も読み返したりした仰天作品にくらべたら刺激やお腹一杯感はなかったかな。読み終えてからでなく読んでる最中から(自分はじっさいにプレイしてないが)他人が操作してたのを横から見てた時のアドベンチャーゲーム的感触、とくに「かまいたちの夜」っぽいなぁ~なんて思いながら読んだかな。

・・まず世界観というのか設定からして(その舞台)SF的な設定に現実感が感じられず(映画で云うとこのアメコミ映画をはじめから観るような)どうにでもできる中でのやりとりに捉えて、あまり芯からどっぷり浸かることなくちょっと引いた感じで読んでたね(いわゆる空想世界でのお話しとして)。いくらなんでも一人を犠牲にしてまで・・っていう考えなのか、発想からして普通じゃないしね。

 犯人による犯行理由も「え?そんなことで?」って捉えちゃったし、しかも犯人だと明かされる以てき方がなんか薄く思えてしまったり。動機が軽いというのか・・清張作品を百作品以上読んだことのある自分にとっても、どうしても人を殺めなければいけない極限の理由っぽさが感じられなかったかな。ライトなタッチだったというわけではなかったにしても、ちょうど赤川次郎作品を読んだ後味に近かったかな。

・・正直、その舞台となった「方舟」じたいに大きな仕掛けや連続殺人におけるトリックとなるものがあるかと思いきや・・とくに感じれれず単に変わった舞台だったと。

・・終わり方は映画の『ソウ』っぽかったって印象。

・・この作品、映像化しない方が絶対いいと思う。じっさい読みながら頭の中で想像する個々の世界観にくらべて実際に絵にしてしまうとチープになり、脚本や出演者にもよるが台無しの可能性が高いのは目に見える。

・・とはいえ、非現実な設定や舞台だと面白さが感じられないかというと全くそうでもなく、例外や読み心地の違うSF要素のある作品も大好きなものも当然あるし、小松左京からステープルドン、アーサー・クークしかり、『モレルの発明』は過去に読んだ作品のなかでもお気に入り作品として筆頭に挙げられるテイストがあって、これはこれで読後感の浸った衝撃は今もって忘れられない。あとは昔でいうと『十角館』『アクロイド』、近年でいうと『しあわせの書』の読後感の衝撃はまだまだ超えられそうもないかな。