(映画パンフレット)『1984』

  ジョージ・オーウェル原作小説を映画化、マイケル・ラドフォード脚本、監督作品『1984』(1984)

  原題「1984/Nineteen Eighty-Four

 (出演)ジョン・ハート、リチャード・バートン、スザンナ・ハミルトン、シリル・キューザック、グレゴール・フィッシャー、

 (撮影)ロジャー・ディーキンス

 (音楽)ユーリズミックス

 (主題歌)アニー・レノックス「Julia」

・・ステープルドン原作小説を読みつつ、タルコフスキー映画の原作を読んでの映画を観ることに続いて、この歳になってようやく名作「1984年」を読み映画を観ることに。・・もっぱらここ数年SF作品(本も映画も)になんだか偏ってる傾向がある。若い頃の自分を思うと考えられないよね、あれだけ毛嫌いしてた世界に今やすんなり面白く堪能してる。

直近での原作「ソラリス(完訳版)」を時間かけて(かかって)読み切ったのに対して、こちらは一気に読んでしまった。まったく難しくもなく、とくにエンディングにかけては読みながら映画を観てるような映像がうかんでくるような・・なんとも切なくも儚くももどかしくも残酷(ただ一言ディストピアとでは説明できない)でありつつも、一組の男女による悲恋の物語に読み終えた際にはどっと疲れもでてきて、しかもため息も出てしまったね。

 巷に云われるディストピアと云っても、他作品で云う『ソイレント・グリーン』や『未来世紀ブラジル』『ニューオーダー』のように世の中をワチャワチャ描かれたものとはちょっと違って登場人物も極力少なく抑圧も恐怖もギュッと凝縮されたような感じだったね。 

   (ここまで映画を観る前に先に読んだ原作に関する率直な感想)

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・・きっちり原作をまとめられて色合いも全編冷たいグレー感あって(その反面の緑映える桃源郷の世界のギャップもありつつ)よかったけど、なんか原作の世界に比べたら世界が小さく物語の流れも速かったね。3時間くらいあっても退屈はしなかったと思うが・・もうちょっとスケール(貧しいオセアニアの街並みは銀鉄の哲郎の故郷の街メガロポリスっぽい世界っていうよりも観ててリンチの『イレイザーヘッド』でのフィラデルフィアのようだったね)が欲しかったね。会社の描写ふくめて『未来世紀ブラジル』よりも小さく感じられたね。期待したラストは原作とは違ったね。自分は読んでる時から映像が丸々イメージされたくらいの映画張りの終演っぽい流れの主人公の破滅エンディングに溜息でる脱力感と絶望感を存分に味わったのだが・・たしかに辛く悲しいエンディングだったけど・・まぁね・・。

 髪を切られたのはホロコーストを思わせられたし、手を挙げてのクロスさせるのは『怒りのデスロード』のウォーボーイズがよぎったし。

 監督は反対したけどプロデューサーにまけて使われたユーリズミックスの楽曲はたしかにいらない。

 

(映画パンフレット)『山女』

  福永壮志監督作品『山女』(2023)

  英題「Mountain Woman」

 (出演)山田杏奈、森山未來、二ノ宮隆太郎、三浦透子、山中崇、川瀬陽太、白川和子、品川徹、でんでん、永瀬正敏、

 (撮影)ダニエル・サティノフ

 (音楽)アレックス・チャン・ハンタイ

・・NHKで放映されたのも気に入り、しかも過去作(ドラマでなく映画で)で同じく気になる女優の山田杏奈さん主演となればお金を払ってでも(その完全版?ロングバージョン?)としての作品を観ようと思い数少ない劇場公開のなか鑑賞。

 テレビ版同様たしかにきれいな映像の不思議なお話しにある程度は満足した。たしかに主演の山田さんもよかった。・・けど、悪く云えば、キレイに無難にまとめて着地させたようなウェルメイドな作品だったかな。・・欲云えばもっとすんごいものが観たかったね。最近の他作品の「福田村事件」などあったりもしたし、古き日本の閉鎖的土着的世界といえばこれまでに今村昌平監督作で堪能してきた身にとってはやはりR指定になってもいいくらいなドロドロと汚くきびしいものが(比べるのもアレだが)観たかったね。

・・そもそもショウガナイながらもモヤモヤ感も多く残るものがあったと云えばある。この作品が山田さん主演だからできた(引き立った)反面、できなかったんじゃないかの部分も考えられる。 あの貧しい食事のシーンをみせられたぶんさぞかし空腹に栄養に大変だったろうなぁを思うと二度ほどの山田さんの脱衣の半裸体で血色のいい肉付きもいいピチピチした肌が。ふつうに思うにガリガリの肌ツヤもない(体毛も処理されないような)もんでしょ? R指定くらいといったのは、ジャンヌダルクを思わせられたラストでの脱衣のくだりも今村監督や外国作品だったら正面から全部見せたんじゃないかな(このへんで山田さんだったから後ろからのちょっととなったのかな)。 肌ツヤといえば山男の森山さんのキャラも髪はボサボサだったが顔の肌ツヤがあって違和感。山で生活してるくらいならもっと歯から眉毛から汚れぐあいまでもっと野性味ある臭いそうな汚らしさがあってもって思ったんだけどね・・。

 そのふたりの山女と山男。そもそも主人公のりんは山男の何に惹かれたんだろうと。そして人間としてオスとメスの動物として仲良くなる過程に性的営みもあってもと想像してしまう。だからこそラストでりんを庇う抵抗する山男の攻防も引き立つんじゃないかなと。しかもあっさりとやられてしまったんだけど(ネタバレになったか)もっと野獣性あるようにもぅ3~4発くらってもまだ死なずこれでもかと襲ってくるくらいの迫力欲しかったね。

 まぁ、今旬な女優山田さんのお芝居が観られただけで満足かな。不満なパンフの文字だけパターン(せめて遠景の山々とか何かしら絵が欲しいよね)とは別にチラシの方での山田さんの顔を見ていると、ひと昔前の同じく実力派女優のひとりだった(最近はどうしたことか)池脇千鶴さんなんかがダブって見えたりなど今後においても期待される女優のひとりだと思うね(出演作は全部チェックして観るかっていうと正直そうでもない、作品や役どころにもよると思う)。