(映画パンフレット)『ライアンの娘(松竹)』

   ロバート・ボルトのオリジナル脚本、デヴィッド・リーン監督作品『ライアンの娘』(1970)リバイバル松竹版パンフレット

   原題「Ryan’s Daughter」

  (出演)ロバート・ミッチャム、サラ・マイルズ、トレヴァー・ハワード、ジョン・ミルズ、レオ・マッカーン、バリー・フォスター、

  (撮影)フレディ・ヤング

  (音楽)モーリス・ジャール

   第43回(1970)アカデミー賞、助演男優賞(ジョン・ミルズ)、撮影賞

・・まさかこの作品にバージョンがあったなんて・・。存在じたい知らなかったし、ぱっと見も初版とそんなに違ってなかったんだが、安価だったし好きな作品でもあるので購入。このパンフも初版もそうだが、できれば深い海の色バージョンの表紙であったらなぁ~と願望。

・・歳を重ねると食べ物の好みも変わっていくかのように(例えが悪いが)映画も年とって理解できたり好きになっていく名作もあったりなど、この映画も二十代や三十代では理解できても良さが分からないもの(アイルランドの田舎を舞台に展開される愛、夫婦、不倫に若い頃は正直退屈)。初めて観た時なんか崖から落ちていく傘しか覚えていなかった記憶も。

年々じゃないが、数年に一度くらいに観るごとに好きにというか体に染みてくる映画の一本。ヒロインの見方も以前とはやはりちがってくる。映画は違えどもモーリス・ジャールのテーマ曲はなんだか『ドクトル』も『インド』も『アラビア』もおんなじように聴こえてしまうけどね。

・・いやぁ、サラ・マイルズがいいね。『午後の曳航』といい体を張ったお芝居したりしてるけど、か弱げな容貌とは裏腹なインパクトある役どころといい幾十年経っても記憶に残る女優さんだ。

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・・実家に帰省中、急に(不意に)またこの映画が観たくなりもぅ10年以上ぶりにじっくりと鑑賞。全然、まったく長いと感じなかった。あらためてこういう大作もたまにはいいなぁと。本編開始前の序曲にはじまり、途中でのインターミッションを経る、昨今の映画では味わえない古き良きこういう映画もまた格別。

更にあらためて主演のサラ・マイルズがよかったね。『ある日どこかで』でのジェーン・シーモア同様、この役を演ずるが為の女優だったかのような女神的存在感あったね。アカデミー賞で賞を獲らなかったのがなんとも不思議に思う。更に更に、あらためて撮影のフレディ・ヤングの名をつよく頭に入れた。

・・いやぁ、しかし、あらためて観返すに、アイルランドの風光明媚と云っていいのか、ロケ地となった舞台の素晴らしいこと。屛風ヶ浦というのか仏が浦というのか『悪霊島』のロケ地だった隠岐島の摩天崖をも思い起こさせられる、一度は行ってみたいなぁと。

・・あらためて観るに、内容(設定的に)では、結婚初夜の夫チャールズをみてるとマキューアンの「初夜」映画では『追憶』が思い起こされ(劇中、結婚の3箇条のひとつに肉欲を満たすことと)、のちの村民たちによるリンチをみるに『楢山節考』が思い起こされたりなど。髪を切られひっそりと島から出ていくロージーをみるとアウシュビッツに送られるかのような悲壮感が。そのラストでの風に帽子が飛ばされていくのが映画の冒頭での風に吹かれていく傘の対を思わせられたかな。

・・この映画の影響受けてデビッド・リーン作品を観ようかと、そんなモードにはいってる。次は『インドへの道』かな。『旅情』『アラビアのロレンス』も、もう一回観てみようかと。というか、最後の70mm作品とも云われるこの映画をいつか大画面での70mmフィルム公開として観てみたいもんだね。

・・最近での小説や漫画の映像化ばかり目立つ小粒ものばかりの(オリジナルもない)日本映画の或る意味不甲斐なさに(観たいという欲も無く、観ていないから小粒も面白くないも云えた権利はないが、あからさまにテレビやネットで紹介されてる宣伝だけを観るに溜息すら出ない)賞がすべてじゃないが、堂々と世界にもアピールできるような、そこそこ製作費もかかる作品を観てみたいもんだね。なにをやってるんだ、なにを作ってるんだとホント思っちゃうよね。オリジナル脚本の書ける日本のロバート・ボルトはいるのか?橋本忍さんのような脚本家はもういないのかね?