(映画パンフレット)『食卓のない家』

 円地文子原作長編小説を映画化、MARUGENビル製作、小林正樹脚本、監督作品『食卓のない家』(1985)

  英題「House without a Dining Table」

 (出演) 仲代達矢、小川真由美、真野あずさ、中井貴一、中井貴恵、岩下志麻、平幹二朗、隆大介、大竹しのぶ、竹本孝之、

 (音楽)武満徹

・・原作は未読。あまりここんとこ新刊書店はともかく古書店でも見かけられないよね。

・・かれこれ数十年と観たい観たいと思っていた今作を初めて鑑賞(ほとんど観ることができないとこれまで諦めてたんだがね)。率直な感想として、舞台劇のような展開や場所的にも動きの少ない、劇中のセリフにもあるまさに全編灰色のような映画。 重かった。けど良かった。ラストではそれまでの灰色がかった重々しさからポッと暖かく救いの感じられた見応えも。たしかにオープニングでのクレジットのひとりに大竹しのぶさんも出演してるのかと頭に入れときながら全然登場しないなぁ~の忘れた頃のラストでの登場。主人公の仲代さん同様観てるこちらもちょっぴり胸があったかくなったりも。カタルシスというのかな。またそれにかぶさる武満さんのスコアもいいじゃないか。

 主人公の仲代さんよりも妻の小川さんも相変わらずのキレ具合に狂気を感じたり、『女王蜂』の時とはちがう芯の強い目を見張る演技だった中井貴恵さんもよかったね。 他には大御所岩下さんも出演だが、やはり個人的に印象深かったのは冒頭からの登場された真野あずささんだったね。いっけんアイドルっぽい幼いかんじに非現実っぽさのキャラ感もあったけどこの映画での一番の華は真野さんだったね。ちなみにお話しの冒頭の部分で名所旧跡などでの登場人物による展開があっての、のちに再び再会し展開にも影響が或るというのは、まさに松本清張原作モノによくありがちな(よくみられる)流れで観てて親しみを感じたね。ちなみに今作での二幕目以降の展開は観ててなんだかドキュメンタリータッチがつよく感じられたね(じっさいの当時の映像なんかも使われてて見応え緊迫感もあったね)。

・・ただ映画を観てちょっと納得いかないというか、気に食わなかったことに、主人公仲代さん(鬼童子)のあまりのモテぶり。単なる僻みやっかみでなく、役柄として、性格から立場から踏まえても、なんで女性陣たちはみんな好き好きって・・人物としてどう魅力があったのか観ながら疑問に思うことがあったね。なんか・・納得いかなかったかな。

・・映画の重々しさとは反対のようなパンフの表紙デザイン。温かみを感じる。この集合写真は一斉に撮ったのかな?それとも別撮りしてふつうに張り付けたのかな?どっちにしても映画の中身が(自分が思うに)舞台調に見えたのもあって、どこか小劇団の作品を思わせられたデザインに感じたね。

・・そもそも原作も長い(厚い)んで、そう簡単に短時間で読めることはないので、いつの日か時間がある時にでも読みたいなと思うことはあるよね。