Updated on 4月 11, 2020
(映画パンフレット)『非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎』
ジェシカ・ユー監督作品『非現実の王国で~ヘンリー・ダーガーの謎~』(2004年)
原題「IN THE REALMS OF THE UNREAL/IN THE REALMS OF THE UNREAL: THE MYSTERY OF HENRY DARGER」
・・ヘンリー・ダーガーとはいったい何者だったんだろうか?
初めて存在を知ってから(NHK日曜美術館での展覧会情報でだったかな?)、一万五千ページを超える原稿の世界最長小説と何百枚もの巨大挿絵などの作品群を手掛けたアウトサイダーアートの第一人者・・というよりも自分は彼の孤独な人間像につよく惹かれている。
30年以上も内に籠り人と接触することなく病院の清掃夫しながら(ひょっと連想したことには、広島県で清掃してたガタロさんがよぎったりなど。ただ、ガタロさんは孤独でなく人々から親しまれ奥さんもいることから境遇はちょっと違うが)、貧しい生活のなかアパートに籠り作品を創り続けたことに(しかも公に披露しようともせず)満足な日々を送ったというのか?そうでもなかったのか?孤独は不幸せだったのか?あれこれ考えてしまうほどの神秘的人間像を感じざるをえない。
・・現在も寝る前などに少しずつ読んでいる「アミエルの日記」の著者アミエル先生同様、彼(ヘンリー)にとっても表現することが生きるうえでの支えだったのだろうなぁ。個人的親近感わく。
また生涯3枚だけの写真しか残っていないことに、撮ってもらう仲間や友達が居なかったのか、単に写真嫌いだったのかは判らないがこのことに関してもなにか共感するものがある(自分は大の写真嫌い)。
自分とヘンリーのもっとも大きく違う点は、なにかモノをつくった後、披露(アピール)する気があるのか無いのか。彼にとっては創ること、他人の評価はどうでもいいようで表現欲のみだったであろうことが自分とは違うものがある(偉人と自分を比べるという浅はかなことだが)。
・・最後にインタビューをメインとしたこの映画を観て気に入ったシーン(語り)として、アパートの大家さんだった女性の云った一言がうなった。「・・(実際は亡くなった夫が云ったこと)・・人は家族もテレビもラジオもない中でこそ凄いものが創れる・・」
・・なるほど。納得というか頷ける要素はあると思う。たしかに今現在の自分たちの周りにはあまりにも情報が溢れすぎている。このことが良いのか悪いことか判別つきかねるが・・。
・・それにしても何故に自分はこの人物の生きざまに未だに強く惹かれるのだろうかねぇ・・?
やっぱり孤高(孤独?)に生きて来たことかなぁ・・?生涯かけてひとりコツコツと創作ものをつくったからかなぁ?生涯3枚しか残っていない写真という要因が共感したかな?
・・ひとりでコツコツと創作に一生を費やすクリエーター。日本では清掃画家としてしられるガタロさんや、三重県松坂に広大な(未完ながら)陶芸空間をつくった東健次さん、フランスでも30年以上人と接することなく黙々と理想宮をつくったシュヴァルなどね。
自分の世界に没入したクリエイターたちのなかでも最も知られるひとり、ヘンリー・ダーガー。
作られた作品よりも人物像に強く惹かれる。自分と共通性もあるのだろうかね?