(映画パンフレット)(原作松本清張作品)『彩り河』

  松本清張の同名原作小説を映画化、霧プロダクション、野村芳太郎製作、脚本、三村晴彦監督作品『彩り河』(1984)

 (出演)三國連太郎、真田広之、石橋蓮司、中野誠也、渡瀬恒彦、平幹二朗、米倉斎加年、名取裕子、沖直美、夏木勲、吉行和子、

 (音楽)鏑木 創

 (主題歌)「Bekieve In Love」真田広之

・・金欲、性欲に蠢く者たちの80年代版「けものみち」といったとこか。華やかな銀座サロンの世界と影の財界やつつましく高速道路で勤務する世界といった陰と陽を如実に表される社会の対立。

会員制のサロン、誘導員、高速道路交通券授受員、銀行界と政界、パトロン、財界雑誌、などが交差される展開。

映画での終盤の復讐劇は映画を観るモノたちへの虐殺というと、のちの『イングロリアス・バスターズ』を思わせられたりも。

渡瀬さん(山越役)の飛び降りのカットはまるで『めまい』。落ちていく黒のシルエットとウネウネ中央で渦巻くデザインなんかは同じくソール・バスのよう。

役者陣では個人的まず目を惹いたのは米倉さん。容姿といい声質もまるで伊藤雄之助さんのようなチクチク厭らしい言動に主演の平さんや真田さんよりも役者としての存在感に軍配。女優陣ではテロップに(新人)の表記されてた沖さんもまだ若いながら後年の出演作に劣らず艶めかしい。しかし何といってもヒロインの名取さんは及ぶまい。清張作品でいうとこの『影の車』での岩下さんを思わせられる、登場の際の常にかかるバックに流れるスキャットがエロチックさを増す効果に大きかった感が。

清張作品問わず、最後の最後までキッチリと描かれて良かったかなと思いきやの・・エンディングでの歌にはさすがに感動も削げてしまった。それまで良かったのに。しかも本業が歌手でない真田さんによるレコード化もされたらしい歌、『砂の器』以降も松竹、野村芳太郎、清張作品でありながらのまさかの歌によるエンディング。わるく云えば、これ(歌によるエンドクレジット)だけで劇場公開映画も2時間サスペンスドラマっぽいかんじに脳裏に植えられてしまう。まさかこの作品からして真田さんのレコードのタイアップされてたのかと。だったら残念だけどね。