Posted on 10月 5, 2025
(映画パンフレット)『ザリガニの鳴くところ』
ディーリア・オーエンズ原作の同名ミステリー小説を映画化、オリビア・ニューマン監督作品『ザリガニの鳴くところ』(2022)
原題「Where the Crawdads Sing」
(出演)デイジー・エドガー=ジョーンズ、テイラー・ジョン・スミス、ハリス・ディキンソン、マイケル・ハイアット、他
(主題歌)テイラー・スウィフト「Carolina」
・・原作は未読、劇場予告やポスター、チラシ等のデザインや雰囲気から惹かれ(どうやらミステリーのようだ、原作も世界的にベストセラーらしきとか、なにか事件らしきが起きて謎も多いらしい等の雰囲気)、それ以上の予備知識なく鑑賞。
率直なところ、大雑把にいうと『砂の器』『落下の解剖学』のような一つの事件にまつわってのじっくりと構えた正統派ミステリーだったかなと。良作であり巷の評価も高いらしいが・・手放しでは絶賛までは刺さらず(良かったんだけどね)、モヤモヤも残る感じだったかな。大雑把にいうと『砂の』や『落下の』のようだと感じたが、観ながらいろんな映画や小説、人物などチラついたりしたね。作品でいうと(少女ひとりの生活から)『白い家の少女』、舞台の環境などからで『思い出のマーニー』なんか、湿地でなく湖畔だが『森の生活(ソロー)』なんかも、ひとり孤高に絵描きとして励む姿に熊谷守一やターシャ・デューダさんも重なったりなどね。
劇中観てて一番胸が苦しかったのは花火の日に約束してての主人公カイヤの一日中ひたすら待つ姿にはよっぽど嬉しかったしよっぽど裏切られたという悲しさもあったんだなぁと、その健気ぶりに観ちゃいられなかったね。
ラストでの犯人がわかる真相解明カットでは観ながらやはり他作品でいうところの『めまい(ヒッチコック)』を連想。こちらとしては観ながら法廷劇を含めた事件が終わって映画も終わりだと思いきや、その後も人生の終りまで続くことに予想してない結末となったかな。
ただ、今回映画を観てなにかしらのモヤモヤも残ったことがいくつかあって(こちら的にはシックリこなかったかなという面で)、まず大きな面でいうと、この映画、事件により(小説同様)フーダニット、ワイダニット、ホワットダニットなどが発生するのだが、フー、ワイ、はいいとして、事件犯行当日の本当はなにが起きたかという(ホワット)が映像としてなく、こちらとしては本当にできたのか?など思ったりとモヤモヤ。詳細にすべて回想しなくても犯人が現場へと向かう道中もさながら、現場での(櫓の上)犯行のしかた(被害者をどうやって落としたか)など気になったね。
あとモヤモヤでは、主演のカイヤ役のデイジー・エドガー=ジョーンズさん(この映画ではじめて知る)含め、少女時代や十代の頃のカイヤ役を演じたのを観て、みんな確かに可愛らしく綺麗だった、女優として演技も良かった、ただ、ひとりつつましく、お金も無い生活をしてるだろうというなか(リアルさを考えると)、普段、日頃、どれくらいのスパンで身体を洗ったり髪を洗ったりしてるのだろう?と、あとそんな贅沢もできないんで化粧なんかしないよなぁ(できないよなぁ)と、それを思うとカイヤを見てても肌ツヤいいし髪の毛もサラサラしてる、なんか違和感が。たしかに女優として小汚くはできないよなと製作面での同情もある。その女優として今回とくにデイジー・エドガー=ジョーンズさんによるNGだったのか(こちらとしては正直裸体が見たかったわけじゃないが)劇中何度もある性交渉の際での(なにか隠してるかのようにも、昔の日本のアイドル映画での主演の営みのような)なにかうまく誤魔化しているような営みに本当の愛による恥ずかしさもない、さらけ出し感がなく(例えば作品によっては上半身から下半身まで隠すことなく演じる場合なんかも)べつにエロで売ってる映画ではないのだが・・なにか開放感というか自然さが感じられなかったかなと勝手な見方があったりも。
キャストでいうと今回観ての一番の推しでいうと、やはり個人的にはデヴィッド・ストラザーンだろうな。はじめて留置所でカイヤと面会するシーンでは正直演じてる役者さんとして誰だかわからなかった(ふつうの弁護力があるのか?と疑問に思ったほどの白髪のおじちゃんかと)。ただ法廷が始まっていろいろ喋る弁護士トムさんの口調と顔を見てるうち、あれ?どっかで見たことある、聞いたことあると、そしてすぐに自分もお気に入りの『グッドナイト&グッドラック』のストラザーンさんじゃないかと確信。以降見方も変わり、もっぱら単なる弁護士役のみにあらずの(サブ的でない)主役をも超えるような演技ぶりを楽しんだ。
・・あらためてパンフ(今回は先にパンフを購入しての鑑賞)を観た後に読んだりしたが、ここ最近見たり読んだなかでのデザインや中身の充実さが豊富でよかったね。ちゃんとした構成もあって、典型的ではあれどプロダクションノートもちゃんとあり、キャストやスタッフ紹介も写真付きのプロフィールもあり、数人によるエッセイや解説もあり、一冊のパンフとして満足。