(映画パンフレット)『足摺岬』

  田宮虎彦の原作小説を映画化、近代映画協会が製作、北星株式会社配給、新藤兼人脚本、吉村公三郎監督作品『足摺岬』(1954)

  英題「Ashizuri Cape」

 (出演)木村功、津島恵子、砂川啓介、信欣三、内藤武敏、金子信雄、日高澄子、森川信、赤木蘭子、河原崎建三、原ひさ子、田中筆子、殿山泰司、嵯峨善兵、菅井一郎、

 (音楽)伊福部昭

・・どういうキッカケで読みたくなったかは忘れてしまったが不意に田宮虎彦原作小説「足摺岬」を読みたくなり(そういう流れだったんだろう)一気に読む。悲しく、重たくも勇気づけられるものもあり、その流れに(既に映画化されてたことを知ってたので)映画の方も観ようと・・これがなかなか観られない。上映はされてないしレンタルとしてもなかなか無い。セルとしてもなかなか売ってない。と、たまたま古書店で安価でみつけたビデオ、そして探してパンフも購入(パンフの方がよりレアの現在)。

・・脚本の段階から田宮作品の他作品の要素も含めた映画となったが、伊福部昭音楽のドォ~ンと悲しいスコアもあることからも原作と同じくらい(引けを取らない)生死の悲しさや恋慕における歯がゆさ、各キャラクターの何気に発する名言に観てるこちらも勇気付けられ癒される。 この映画に関しては観心地といいトーン、匂いも(重たく暗いが)自分は好きだなぁ。一回こっきりでなく何度観てもいいと思う。

 キャスト陣も皆いい。ヒロインの津島さん、控えめで素朴さがよかった(終盤での八重は主人公浅井からの求愛をやはり待ってたのかな)。足摺岬の宿での薬売りの殿山さんともう一人のお遍路さん役のコンビが(キャラが)いい。病身中の少年の可愛らしさ。一方的に警察に連行されていく信欣三なんかは『帝銀事件』の平沢を思い出したり。

・・映画を観てその感動をもう一度味わおうと手元のパンフを手にとる。表紙を見る。こんなシーンあったっけ? あと、この二人誰?木村さんと津島さん?なんか違うように見える。

(映画パンフレット)『愛の陽炎』

  橋本忍脚本、三村晴彦監督作品『愛の陽炎』(1986)

  英題「Love’s Shimmer

 (出演)伊藤麻衣子、萩原流行、北林谷栄 、司葉子、佐野浅夫 、小坂一也 、小倉一郎 、

 (主題歌)伊藤麻衣子「愛の陽炎」

 (メインテーマ)伊藤麻衣子「奥秩父子守歌」 

・・先日久しぶりに観て初見時よりもさらに感動に胸ときめかせてくれた『天城越え』のこともあって、三村晴彦監督の他作品はどうかと関心持って、さらには脚本界の大御所橋本忍によるシナリオというダブルな見どころというのか観たい欲求がつのり公開されてからけっこう経つ作品なのだが(予備知識らしきものは無く世の情報によると一種のカルト的にも捉えられてると)初めて観ることに。

・・率直なところ『幻の湖』が頭の中でよぎるほどの、これって真面目に観ていいのかどうか、ホラーなのかコメディなのか困惑してしまうような、なんとも言えない映画に感想もなにも、とりあえず観ましたというしかないような・・困っちゃったねぇ。ヘンテコ映画といっていいのかトンデモ映画なのか、この時期に珍品映画をまた体感(実写映画のドカベン以来といったとこか)。

 簡単にいうと製材所という地味な舞台のなかでの結婚詐欺と呪いの五寸釘・・とでもいったとこか。この作品、製作陣的にはどう捉えられようがホントに作りたかったという映画だったのかな?というのは、よくまぁこの内容で多くの客を呼ぼうととしたのか疑問がのこる一方。

・・当時二十歳そこそこだったのかな?伊藤さんもよく頑張ったんじゃないかな。『ボビーに首ったけ』を思わせられたほどやたらバイクの走行カットが多かったなぁとあったけど、どうやらちゃんと運転してたようだし泣いては怒ってと共演の萩原さんによくもまぁ振り回されたなぁと。そして100%あるだろうなと思ってたエンディングでの歌による締め(これはまさにアイドル映画としての必須)。

・・けっきょくのところ、こうも同じ監督の手掛ける映画であっても中身(物語)によっては作家性も何もなく、しかも同じ監督が手掛けたのかどうかも判らなくなるほどの感動、無感動があるものなんだなとヒシと感じたね。