(映画パンフレット)『炎上』

  三島由紀夫原作「金閣寺」を基に映画化、和田夏十脚本、市川崑監督作品『炎上』(1958)

  英題「blaze」

 (出演)市川雷蔵、仲代達矢、中村鴈治郎、浦路洋子、中村玉緒、新珠三千代、舟木洋一、信欣三、香川良介、北林谷栄、

 (撮影)宮川一夫

 (音楽)黛敏郎

    ~大映スコープ~

・・今回久しぶりの(20年以上ぶりかな?もっとかな?)鑑賞。もぅとっくに記憶がなかったから、てっきりラストは(数少ないながらもやはり印象に残ってた)闇の中燃える驟閣寺(金閣寺)で終わりだったんじゃなかったかなと思いながら観てると冒頭から引き継いでの連行されてのあっけない自害の幕切れ。こんなのあったっけ?のような初めて観る感。 壮大に燃え盛る寺で終わってもと個人的欲がでたね。

 同じ大映映画(大映のフィルム)であって、中身も文芸物であり、登場人物に中村鴈治郎さんもいることから(同じ匂いがしたということで)川島雄三監督の『雁の寺』なんかと同じような観心地あったかな。

・・どっちが優劣までは云わないが、どうしても同じ原作題材からの映画であるいじょう高林陽一監督のATG映画『金閣寺』と比べてしまう。市川版では登場人物有為子が削られてる。

・・オープニングタイトルシークエンスでの後年主流となるタイポグラフィとは違いちょっとソウル・バス風にもみえた幾何学タッチがいい。

・・仲代さんの登場のファーストカット(びっこ歩きする後ろ姿)の異様な絵は不気味。

 撮影の宮川一夫さんの功績かたしかに各カットの絵はよかったと思う。ただ、今回久々に(名作と云われてるいじょう期待も自然となる)観て、主人公溝口の放火にいたる動機(憎しみや寺の美にたいする思いなど)が薄いというのか感じられなかったね。放火にいたるまでの溝口の苦悩や悲しみ劣等感など募り募る鬱憤というか衝動が感じられずなんだかサラリと軽い気持ちで火をつけたかのようにみえてしまって、初めて観た時の感動が今回「あれ?こんなんだったっけ?」と。