(映画パンフレット)『トニー滝谷』

 村上春樹原作短編集「レキシントンの幽霊」のなかの一篇の同名作品を映画化、市川準脚本、監督作品『トニー滝谷』(2005)

  英題「TONY TAKITANI」

 (出演)イッセー尾形、宮沢りえ、

 (音楽)坂本龍一

・・原作を読んでる最中から感じたけど、この男、自分と似る部分(キーとしては孤独かな)が多かったなぁと。

・・映画は76分と、もうちょっとあっても良かったんじゃないかなぁと。トニーが生まれる前の父親のパートをもう少しあってもと思ったね。全編ローアングルローポジション、銀残しのように感じられたグレー系の冷たい抽象的冷ややかな映像。やり取りが観てて心地いい。舞台劇を観てるような書き割りセットといいつつ安っぽさはあまり感じられず逆にその開かれた空間がスタイリッシュ。うるささもない静かなとはいえ、登場人物らに朗読するような棒読み風な台詞にはちょっと違和感。だいたい皆終始笑顔がない。

 二幕目からはヒッチコックの『レベッカ』や『めまい』感。

 天井のないクロゼットでの長回しのカットはハイライト的圧巻、観入ってしまった。

・・パンフでは坂本さんからは『髪結いの亭主』抽象的悲しい喪失感な響きをだったらしいけど、自分的には反復されるメロディーから別な『スネイク・アイズ』を想起したね。

・・イッセーさんは原作の印象から外れない良い印象役を演じてたけど、自分が思うにの宮沢さん、役者として全然批判することはないのだが、如何せん、先入観、イメージがある。しかも宮沢さんだからできるのと反面できないこともある。絡みや汚いこと等々。けっしてミスマッチではなかったんだが、無名でももっと他にもヒロインを演じられる女優さんも多々いるんじゃないかとね。