(映画パンフレット)『落下の解剖学』

  カンヌ国際映画祭パルムドール賞受賞作品、ジュスティーヌ・トリエ脚本、監督作品『落下の解剖学』(2023)

  原題「Anatomie d’une chute」

 (出演)ザンドラ・ヒュラー、スワン・アルロー、ミロ・マシャド・グラネール、アントワーヌ・レナル、

・・大ヒットしてるからだとか、巷に評判いいから・・などにおどらされず、あくまでも自分にとって観心地のいい時間(ひととき)が過ごせられるような傾向の映画を好んで観ているなか(ここ最近でいうとヒットとはまるで無縁なベルギー映画『Here』など)さすがに予告編や映画情報を目にして(アカデミー賞にもノミネートされてると)受けとめ的に一級品のミステリー映画かなと早速鑑賞。

・・ちがったね。いっけん事件起きての全編裁判映画ということからも、たとえば邦画でいうとこの大岡昇平原作の野村芳太郎監督『事件』っぽいのようにも感じることもあろうが、なんか違った。事件においての誰が?どうだった?などの真相を突き止めるのがメインでなく事件によって浮き彫りにされた夫婦の失墜というかこれこそ落下だったんだなと、そういう映画だったね。観終わってもモヤモヤの残る真相もよくわからない・・観心地は悪い映画だったね。映画全体としても(ハマりぐあい、オモシロさ)自分としては正直刺さらなかったなぁ。夫婦間を描いた『ゴーンガール』はエキサイティングしたけど、なにが違ったんだろ?自分にとってのセンセーショナル度合いがこの作品では地味で(たしかに喧嘩のやりとりは聴いちゃいられなかったけどね)スケール的にも小さかったかな。

 と、なにより、一番こたえたのが揺さぶられてばかり、煮え切らないし、なによりも情報量が多すぎて(台詞のやりとりの速さから)次から次へと把握するのに疲れた。

 人間の演技よりも(巷でも云われてるように)たしかにワンちゃんはよかった。あの芝居なら『南極物語』の犬たちよりも現実味あって献身さなど見ても可愛らしいよね。

 夫のウジウジ云う愚痴など観ながらホントにイライラさせられたりもしたし、そもそも、フィクションといえども、まったく違う環境で育ち違う価値観で生きてきた赤の他人が一時の「好き、好き」で一緒になるという法律上の(結婚)、年齢重ねても中身が子供じゃ相手する方も疲れるわな。そりゃ、互いが剥き出しになればケンカにもなるは離婚にもなるは殺人にまでもなるはで・・子供もかわいそう。それこそ犬も喰わないわね。

・・パンフのデザイン。相変わらず(今時らしい)シンプルな文字だけパターン。チラシのような俯瞰ショットの写真は使えなかったのかな?もしくはフランスオリジナル版ポスターのような夫婦2ショットもありきだと思うんだが。