(映画パンフレット)(黒澤映画)『どん底』

 ロシアの劇作家 マクシム・ゴーリキー の戯曲『どん底』をもとに映画化、黒澤明製作、脚本、編集、監督作品『どん底』(1957)

  英題(外国版タイトル)「Les bas-fonds」

 (出演)三船敏郎、山田五十鈴、三井弘次、左卜全、田中春男、藤原釜足、香川京子、千秋実、渡辺篤、清川虹子、中村鴈治郎、東野英治郎、根岸明美、

 (音楽)佐藤勝

・・映画を観るに際して、ついでに原作も読んでみようと思ったが、いまだ未読(積読)。

・・歳を重ねるにつれ黒澤映画のなかでも好み(趣向)が変わってきているかと気付くことがある。若い頃は代表作だと云われ、映画ファンからもまず先に挙げられる『七人の侍』や『天国と地獄』などやはり好んで何度も観てたりしたのが、ここ最近(数年来にわたって)は比較的地味や、暗いかと云われたりもする、例えば『生き物の記録』をはじめ『どですかでん』のような傾向の作品に偏りつつある。そんななかでのこの『どん底』。いい。面白い。中身も人間の悲哀から様々なキャラたちによる人間模様が展開されて、一方の戦国合戦モノのスケールはあれど中身的に人間のやりとりに深い追及が薄いとかんじられるものに惹かれ具合が薄れてきてるようにも感じるなど。

 ようは映画と云いつつも原作が戯曲なだけに映画もまさに舞台調で長い落語感。ロシアのお話を江戸の貧しい貧民長屋(冒頭のシーンから砂の女の家屋を思わせられる)に置き換えられるというまさに落語のようなコメディとなってる。 個人的には北野武監督の『座頭市』のほぼ全部を面白いと受けてる反面ラストでのタップダンス取り入れたダンスのくだりがミュージカルテイストに感じノレなかったこともあったことと同様、この映画でも楽しく歌いながらの宴があるんだが、ちょっとノレナカッタなぁ。

 あと久しぶりに観ても所々台詞の聞き取りにくいとこもあったりして、今なんて言った?のようなとこも何度かあり多少のストレス感。

・・パンフの表紙デザインに関しては、良いも悪いもないが、そんなに主役級か?と今回は思った三船敏郎をあえて推し、個人的にはあまり観ていて気持ち良くなかった山田さんの香川さんに対する掴み襲うあたりが使われて、自由にスチール素材が使えるなら、やはり、小津映画の『長屋紳士録』じゃないが貧民窟のなかでの踊り騒ぐ宴のカットがよろしいんじゃないかとね。

 なによりこの映画、黒澤映画のお馴染みキャラたちの共演ぶりが観ていてまず楽しい。元々個人的にも贔屓してる俳優、三井さんをはじめ左さん、中村鴈治郎さんも、ただ二代目で、ホントは四代目の方。これに怪演俳優、伊藤雄之助さんも出てればなぁ~と。 そしてこの映画では根岸さん山田さんなど色ぽかったねぇ。香川さんはどちらかというとまだ若いぶん可愛らしさ、初々しさがあるね。

 映画を観た後にはやっぱり原作(戯曲)読もうかと前向きになるんだけど、一日二日経つと忘れちゃうんだよなぁ(他にも優先じゃないが積読本も溜まってて結局それらに埋もれてしまうんだよね)。